住宅すごろくについて考える
江戸川区の不動産エージェント江戸川不動産情報館コンノヒデキです。
本日のテーマは「住宅すごろく」についてです。
参考にして下さい。
目次
住宅すごろくで詰まないように
日本の一般的な住宅は、ファミリータイプと呼ばれるように子育てを想定した間取りになっています。
子供が小学生に上がった頃に購入して、大学を卒業する頃に親元を離れることを想定すると、子供が家を使う期間はおよそ15~16年位です。
一方、住宅ローンは35年で組む方が多いので、およそ20年間子供がいない期間を過ごすことになります。
ライフイベントと住宅の関係について「住宅双六(すごろく)」という表現をすることがあるのですが、今回は将来の住み替えを前提とした住宅すごろくについて考えてみたいと思います。
昭和・平成の一般的な住宅すごろく
住宅すごろくを分かりやすくフローチャートにしてみました。
- 大学生・新社会人
- アパート(1R・1K等)
- 結婚・出産
- ファミリー賃貸(1LDK・2LDK等)
- 年齢30代前後
- 子育てのため、新築戸建てを購入
- 子供が独立
- 持ち家の築年数20年以上
- 定年(65歳)
- 持ち家の住宅購入完済・築年数30年以上
- 老後
- 持ち家の老朽化
建物価値0円(売却時には解体費用分値引き)
老後には広過ぎる間取り
古い設備
売るに売れない、住み替えがしづらい
親元を離れて単身者向け賃貸に住むところから住宅すごろくは始まります。
その後、結婚をして夫婦二人で生活するために部屋数を増やすため、少し広めの賃貸(2~3LDK)へ移ります。
なかにはお子様が産まれたので、さらに広い賃貸住宅(3LDK以上)へ引っ越す人もいらっしゃることでしょう。
この頃になると、お子様のお友達やご自身の兄弟姉妹の家庭が持ち家を買い始め、自分ちちも子育てのために持ち家を購入します。
やがて子供が大きくなって独立しますが、そのまま住み続けます。
更に年を重ねて介護が必要になり、高齢者向け施設への入居を検討する。
そして、持ち家はそのまま空き家となります。
独立した子供たちも家を持っているので、多くの場合、持ち家は相続時に処分されることが多いようです。
これが住宅業界で良く言われる「住宅すごろく」です。
現在の多様化されたライフスタイルとミスマッチなのがよくわかると思います。
子供が独立後は使い勝手の悪い4LDK
まずは一般的な住宅の間取りを想定します。
持ち家のファミリータイプは3LDK~4LDKが主流です。
LDKと夫婦の居室、子供部屋という区分けですね。
LDK以外の居室は6帖くらいの広さが一般的です。
(都心部だと6帖も取れませんが…)
この6帖くらいの広さの子供部屋が後々問題となるのです。
子供たちが年頃になるとプライバシーの関係から子供に個室を用意したいと考える方が多いです。
子供が利用する分には有効なスペースですが、いざ子供が独立して巣立っていくと、この「元(もと)」子供部屋の取り扱いに困ってしまうのです。
倉庫と化す子供部屋
この記事を読まれている方は、既に実家から独立している人が多いと思います。
実家にかつて自分が住んでいたころの荷物や家具が置きっぱなしになっていませんか?
親世代からすると元々使っていなかった子供部屋がいきなり空いても利用目的はありません。
ちなみに、私の両親は、最近、実家を売却して終の棲家として平屋を建築しました。
その引っ越しの際には、私宛に捨てるに捨てられなかった私の大量の私物(アルバム・写真・子供の頃の通信簿・工作物・漫画等)が送られて届きました。
置く場所に困り、今でも会社に置きっ放しです^^;
新築時に、将来リフォームで広く出来るような設計になっていない限り、小分けされた子供部屋はそのままで、結局倉庫になってしまっていることが多いようです。
なかには子供が住んでいたころのまま放置している家もあるみたいです。
子育てのための間取りは、老夫婦にとっては、子育てが終わると最適な間取りとは言えないのです。
帰省時の宿問題
空間利用の効率から考えると、子育てが終わったら夫婦二人が過ごすのに最適な間取りの家への住み替えを行うのが合理的です。
しかしシニア世代の住み替えは一般的ではありません。
シニア世代の住み替えを邪魔する要因の一つは「帰省」という文化です。
お盆やお正月に子供達が帰省する際に、子供達(孫達)が泊まるスペースが欲しいのです。
年に数回しか使われない宿のために、子供部屋は放置されているのです。
親が住んでいるところが「実家」と割り切ることが出来れば良いのですが、子供達からすると家だけでなく周辺の環境も含めて「実家」と言える存在なので、かつて住んでいた環境が失われるのは寂しいものです。
親世代からしても家族を営んできた「想い出」は、効率だけでは割り切ることは難しく、結果、子供達が返ってくる場所を守るという判断をされる方が多いのです。
住み替えの資金問題
老後のシニア世代の住み替えが進まない理由がもう一つあります。
それは住宅取得資金問題です。
初めて家を買う1次取得層は年齢も若いので35年という長期間の住宅ローンを利用することができます。
しかしながら、老後のシニア世代は住宅ローンを組むことができても期間は短く、それほど多くの資金を借りることは出来ません。
既存の持ち家をかつて購入した金額とあまり変わらない金額で売却することが出来れば、住み替えの選択肢も広がるのですが、売却しようにも郊外で需要がなければ土地値でも売れないといった状態では、住み替えのための資金を準備することが出来ません。
資金不足で郊外から郊外への移住となると、どうしても今の環境よりもグレードダウンしてしまうイメージが先行して、積極的な住み替えの検討にならないのが現状なのです。
住宅すごろくを逆算してみよう
実家の維持と老後の生活は必ずしもリンクしません。
親と子供の距離が離れると、老後の選択肢が狭まるからです。
例えば、実家が地方で子供が東京に住んでいると想定します。
親が元気なうちは、上記のような「想い出の実家」が機能します。
しかし、親が体調を崩し介護が必要になったと考えると、親と子供の距離が離れているため高齢者施設に頼るしか方法がなくなってしまいます。
多くの場合、その頃には子供たちは持ち家を購入しています。
しかし子供が購入する家は子育てのための家ですので、親の介護を行うためのスペースはありません。
住宅すごろくのラストは病院
住宅すごろくの最後は病院です。
自宅で家族に見守られながら、息を引き取るという方はほとんどいません。
多くの方は病院で最後を迎えます。
亡くなるまでの一定期間病院での生活が待っています。
高齢による体力低下から、一人(もしくは老夫婦)では生活できなくなると介護が必要になります。
つまり老後を考える上で「介護」→「病院での生活」を外すことは出来ないのです。
幸せな老後は子供・孫世代が与えてくれるものではありません。
きちんと計画を立てて、子供・孫世代が困らないように準備をしておく必要があるのです。
住宅すごろくの終盤、「介護」→「病院での生活」においてはマイホームの存在は意味をなしません。
「想い出」にすがるよりも、資金化して介護費用に充てた方が、子供・孫世代が困らないからです。
住宅すごろくで詰まない方法
従来の「住宅すごろく」の問題点として下記が挙げられます。
- 子供が独立すると無駄なスペースが発生
- 高齢者施設への入居費用を貯蓄しておく必要あり
- 高齢者施設の費用が不足した場合、子供が勝手に家を売却することができないので、不足分を子供が負担することに
- 住宅すごろくの終盤は誰も住まない(無駄になる)家
- 相続時の売却は思うように進まない(買いたたかれる)恐れあり
※早く処分しようと思うと売却価格を高く交渉出来ない
親は、子供や孫世代に迷惑をかけるのは本意ではないはずです。
ですから、これからは以下のような新しい住宅すごろくを考える必要があります。
- 学生・新社会人
- 単身者用の賃貸
- 結婚・出産
- 夫婦二人で生活できる賃貸へ住み替え
- 子育て
- 子供の成長に合わせて、子育てのためのファミリータイプの家を購入
- 子供の独立
- 子供が成長し、独立したら再び夫婦二人の生活に戻ります。
この頃から自宅の資金化・住み替えを検討
特に子供が遠くに住んでいる場合は子供が住む近くのエリアへの住み替えを検討
- 介護問題への備え
- 遅くとも高齢者施設への入居までに自宅を処分して入居費用に充てます。
- 相続
- 高齢者施設から病院での生活、最後は病院で息を引き取ります。
自宅を売却した資金から高齢者施設入居費用が差し引かれ、残った金額が子供等に相続されます。
家は買って終わりではない
重要なのは家は買って終わりではないという点です。
「終の棲家」といって死ぬまで住むつもりでいても、子供に迷惑をかけたくなければ、どこかの段階で家は売らなければなりません。
どれだけ介護費用で困ったとしても子供は「想い出の実家」を処分できないからです。
遠い将来の話なのでイメージがつかないかもしれませんが、これから家を買う方は、いい加減な選び方をすると、自分が高齢者になった時に自らの首を絞めてしまいます。
家を買う時には家を売る時のことを想定しなければならないのです。
これが令和時代の住宅購入です。
これから家を買う方が持ち家の売却を考える頃には、少子高齢化社会はもっと進行しています。
「将来売りやすい家を買う」
そのためには、資産価値が維持しやすい家を買う必要があるのです。
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