不動産売買と相続 引渡前に売主が亡くなったらどうなる?
江戸川区の不動産エージェント江戸川不動産情報館・金野秀樹(コンノヒデキ)です。
本日のテーマは「不動産売買と相続」についてです。
引渡前に、売主が亡くなってしまったらどうなるのでしょうか?
参考にして下さい。
目次
不動産売買と相続問題
不動産の売却を行うと、不動産の所有権は売主から買主に移転することになります。
しかし、もし引渡し・所有権移転の前に売主が亡くなってしまった場合はどうなるのでしょうか?
そのまま買主へ所有権を移転することが出来るのでしょうか。
事例をもとに解説していきましょう。
売買契約締結後に売主が亡くなられた場合の不動産売買契約の取扱について
売主であるAさんは、高齢で持病の経過も芳しくなかった為、子供たちに田舎の土地を残しても処分に困ると考え、生前に処分したいという意向があり、Cさんに売却する旨の売買契約を締結しました。
引渡前に売主であるAさんが亡くなる
売買契約の取り決めでは、契約から一か月後に残金決済・引渡しを予定していました。
しかし、残金決済・引渡し予定日の直前にAさんの容体が急変してしまい、亡くなってしまったのです。
父親である「Aさん」が売買契約を締結していたが、引渡し直前に売主である「Aさん」が亡くなってしまった場合、相続人である息子「Bさん」はどうすれば良いのでしょうか?
売買契約は有効である
売買契約を締結している場合、仮に売主が亡くなってしまった場合でも、その契約は有効です。
売買契約を締結すると、売主買主の双方には履行義務が生じます。
売買契約締結後の双方の履行義務は、売主は不動産の引き渡し、買主は代金の支払いとなります。
もし仮に売主が亡くなってしまった場合には、売主の相続人はこの履行義務を果たす義務はあるのです。
相続人が履行義務を承継する
上記の事例の相続人Bさんは、相続により父親Aさんの売主としての地位を承継する事になります。
そして、決済日の直前の死亡となれば、相続登記をする必要が出てきます。
相続登記を行う時間的余裕が限られてしまう為、当初のスケジュールでは難しいことが予想され、実務上では決済日の延期申し出をすることが考えられます。
買主が引渡しの延期に応じなかったらどうなる?
仮に買主のCさんが相続による引渡し延期の申出に応じず、引渡しをしないのなら違約金を支払えと求めてきたらどうなるのでしょうか?
まず、原則から説明していきましょう。
売主から引渡日の延期を申し入れられても、買主はそれに応じる義務はありません。
そうなると、売主が引渡を履行できない場合、違約金が発生する可能性が出てきます。
しかしながら、父親であるAさんから売買契約が締結されている事を聞いていない相続人Bさんは、急いで相続登記の準備をしたが、間に合わない場合だって当然あるわけです。
それでも違約金を支払わなければいけないとしたら、随分酷なよう気がします。
責めに帰する事が出来ない場合は例外規定がある
売主側に責めに帰するべき事由がない場合には、民法では下記のような定めがあります。
新民法415条1項但し書き
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
相続人であるBさんは、次の項目を確認する必要があります。
- 被相続人が締結した契約の有無
- 有効性の調査(未履行であるか否かの状況把握等に要する時間)
- 必要書類を揃える為に要する時間
結果、被相続人の債務を履行できなかった場合でも、取引上の社会通念に照らし違約金の請求が認められない場合があるということです。
但し、責任が無条件で無くなるということではなく、債務を履行できなかった方の債務者が、主張立証しなければなりませんので注意しましょう。
まとめ
不動産の売却時に売主が亡くなってしまった場合、売買契約が有効に締結している状態であれば、売主買主の双方に契約を履行する義務が生じます。
そのため、売主の死亡によって売買契約が無効になるという事はありません。
亡くなってしまった売主の方(被相続人)に代わって、相続人の方が債務を履行する必要があるわけです。
特に相続登記が必要となる場合では、売買代金の残金決済・引渡日までに、様々な手続きを行う必要がありますので注意しましょう。
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この記事を書いた不動産エージェント
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