インスペクションの現実的な問題点とは!?
江戸川区の不動産エージェント江戸川不動産情報館・金野秀樹(コンノヒデキ)です。
本日のテーマは「インスペクションの現実的な問題点」についてです。
参考にして下さい。
目次
住宅購入時のインスペクションの現実的な問題点とは?
平成30年(2018年)4月以降、宅建業法の改正により「重要事項説明書」による説明が義務化されたインスペクション(建物状況調査)ですが、実際の実務上ではどういう問題点があるのでしょうか?
ちなみに、この義務化というのは、インスペクションを行うことを義務化したわけではありません。
- インスペクションの実施の有無
- 実施された場合はその結果の概要を説明
上記の項目の説明が義務化されたに過ぎないです。
インスペクションは、簡単に言えば、建物の調査業務のことです。
住宅診断・ホームインスペクション等、様々なサービスが乱立していますが、重要事項説明書の建物状況調査についての記載を義務化したことにより、不動産・住宅購入時のインスペクションの立ち位置がはっきりとした形となりました。
しかしながら、この建物状況調査の制度が運用されてから数年が経過しましたが、建物状況調査が一般化されるどころか、業者によっては、重要事項説明書に記載義務があるので、とりあえず存在は伝えるのですが、制度本来の意義をしっかりと理解していないというケースもあるようです。
今回は、不動産・住宅購入時に、なぜこのインスペクション(建物状況調査)が必要で、結果をどのように理解し役立てれば良いのかについて解説致します。
インスペクション説明義務化の背景
国土交通省が、宅建業法を改正して、重要事項説明書にインスペクション(建物状況調査)についての記載を義務化した背景は下記の通りです。
(数値は平成28年6月3日に公布された時点のもの)
- 我が国の既存住宅流通シェアは、欧米諸国(約70~90%)と比較して極めて低い水準(14.7%)。
- 既存住宅の流通促進は、既存住宅市場の拡大による経済効果、ライフステージに応じた住替え等による豊かな住生活の実現等の意義がある。
既存住宅とは、中古住宅のことです。
既存建物取引時の情報提供の充実をはかることで、消費者にとっての住宅の質に対する不安を払しょくして、既存住宅流通シェアを拡大することがその背景だったわけです。
インスペクションだけでは意味がない?
インスペクション(建物状況調査)に対して「あの程度の調査では意味がない」そんな声をあげる宅建業者も、なかにはいるようです。
もし、住宅購入を相談している不動産事業者の担当者がそんなことを言っていたら、その事業者経由で購入することをやめた方が良いかもしれません。
何故なら、その事業者は、インスペクション制度のことを全く理解していないからです。
インスペクションの調査目的
建物状況調査は、建物の劣化状況の確認が主な目的です。
非破壊の検査で足場は作らずに目視出来る範囲が検査対象となります。
床下や小屋裏は点検口から覗く程度ですから、お世辞にも完璧な調査とは言えないかもしれません。
すなわち、建物状況調査を実施したからといって「安心・安全な家」とは言えないのです。
建物状況調査を実施する目的を正しく理解していれば、調査だけでは意味がないこと、中古住宅の取引には欠かせない制度であることをご理解頂けると思います。
事例を挙げて考えてみる
建物状況調査以外にも様々な調査業務があります。
代表的なのは「耐震診断」です。
主に建築士が現地調査を実施して、建物の耐震性を評価する業務です。
それでは、この「耐震診断」を例にして、これまで不動産市場が抱えている調査業務の問題点について解説していきましょう。
リスクを知るだけでは意味がない
調査業務の問題点は、調査事業者が行った調査結果をヘッジする仕組みがないという点に尽きます。
誤解を恐れずに表現しますと、調査結果はただ単にその建築士の見解でしかないのです。
消費者は結果を聞いても保証なしが現実
例えば、とある建築士が耐震診断を実施しました。
この時に、その建築士が重大な見落としをしてしまったとしましょう。
そして正しくない診断結果を依頼者に報告しました。
この時、依頼者はこの建築士の見落としに気が付くことが出来ると思いますか?
仮に見落としに気が付いたとして、この建築士の見落としが過失であることを証明することが出来るのでしょうか?
そもそも専門知識がないから、専門家である建築士に調査を依頼したわけです。
結果、調査業務に問題が生じた場合、消費者はかなり不利な立場になるわけです。
このように消費者と事業者との2者間の契約行為は問題が生じた時に、消費者が不利になりがちという問題があるのです。
だったらインスペクションは意味がないのか?
インスペクション(建物状況調査)で考えてみますと、とある建築士がインスペクションを実施したとして、その調査結果が正しかろうと誤っていようと、後々、雨漏れ等の被害が生じた時には、調査を行った建築士の過失を問うことは現実的ではないのです。
結果「インスペクションは意味がない」という判断になってしまうわけです。
インスペクション+瑕疵保険があるべき姿
建物状況調査の本質は「建物の調査」ではないのです。
?
どういうこと?と思われる方がいらっしゃるかもしれません。
建物状況調査は、既存住宅売買瑕疵保険とセットで運用することで、「安心・安全」を担保出来る仕組みになります。
国土交通省では、このことを「検査と保証が一体」と表現しています。
建物状況調査の検査項目は、既存住宅売買瑕疵保険の現況検査とほとんど調査内容が同じです。
つまり建物状況調査で問題が無いから安心ではなくて、調査で問題がないということは「既存住宅売買瑕疵保険」の検査基準に合格するということになり、瑕疵保険に加入をすれば「安心・安全」を担保出来るということになるわけです。
前述した「耐震診断」で挙げた調査業務が抱える問題点も瑕疵保険制度で解決出来ます。
既存住宅売買瑕疵保険に加入する為には、検査会社(もしくは瑕疵保険法人に登録のある建築士)が建物調査を行います。
その調査結果を元にして、瑕疵保険法人が検査結果が適切であるかどうかのチェックを行う仕組みになっています。
つまり調査結果については、調査を担当した建築士だけでなく「瑕疵保険法人」も責任を負うことになるわけです。
既存住宅売買瑕疵保険の保証範囲
既存住宅売買瑕疵保険は、建物の構造耐力上主要な部分や雨水の侵入を防止する部分等に対する保険制度です。
保険期間内に雨漏れなどが発生した場合は、その補修費用が瑕疵保険法人から支払われることになります。
問題解決のための資力が確保されておりますので、消費者である買主が泣き寝入りしなければならない状況を回避出来るというわけです。
瑕疵保険制度の詳細は下記リンク先をご参照下さい。
既存住宅売買瑕疵保険は、消費者保護の制度です。
中古住宅、特に中古戸建の取引では欠かせないと言っても過言ではありません。
改修工事の実施について
実は「検査と保証が一体」では足りない要素があります。
そして、それこそが不動産取引時に宅建業者がこの制度を積極的にアナウンスしない理由なのです。
足りない要素とは、ズバリ「改修工事」です。
中古住宅なので、全ての物件が既存住宅売買瑕疵保険の検査基準に合格するわけではありません。
それどころか検査に合格しない(何かしらの劣化事象がある)可能性の方が高いです。
悪いところは是正すれば良いだけの話なのですが、何かしら問題のある住宅(検査に不合格)=売りにくい、という勝手な思い込みから誤った判断や誘導をしている宅建業者も多いようです。
厳しい言い方ですが、中古住宅なのですから、何かしら問題があって当然と考えておくべきなのです。
さらに中古住宅の購入時には、ある程度の改修費用を想定しておく必要があります。
改修工事が不要であることに越した事はないのですが、改修工事を前提としておいた方が、物件の選択肢が広がります。
但し、基礎部分に大きな問題がある場合は、建て替えた方が金銭的にメリットがあるという場合もあります。
瑕疵保険の制度は「検査と保証と工事が一体」と捉えるべきなのです。
インスペクションを行う適切なタイミングはいつが良いのか?
インスペクションの現実的な問題点として、インスペクションを行うタイミングについても解説しておきましょう。
いきなり正解からお伝えします。
ズバリ、インスペクションを行う適切なタイミングは「買付申込後、売買契約前」です。
買付申込書を提出する事によって、具体的に購入したいという意思表示を売主様に示し、その上でインスペクションの手配を行います。
注意しなければならないのは、インスペクションの結果によっては、購入希望金額が変わることを事前に売主様側に伝えておくことです。
何故なら、インスペクションの結果、想定していない建物の不具合が見つかった場合、リフォーム・改修費用の予算が変わるからです。
但し、インスペクションを手配している間に、他の競合の方が申込んでくる可能性はどうしても避けられません。
この場合は、インスペクション前に売買契約を締結するかどうかの意思決定をしなければなりません。
立地・間取り等の優先順位の高い条件が合致していて、万が一の改修費用の資金計画にも余裕がある場合には、インスペクション前に売買契約を締結するという選択肢もあると思います。
しかしながら、もしインスペクションの結果、想定を上回る建物の不具合等がみつかり、売主様に契約不適合責任も負ってもらえないリスクを考えると、やはり売買契約前がインスぺクションの最適なタイミングだと言えるでしょう。
インスペクションの結果、購入を見送るという選択肢も当然にあります。
その場合でも調査費用が発生することは予め覚悟しておきましょう。
インスペクションの費用は、事業者や検査項目によって違いますが、各種オプションを付けて見積もって10万円くらいあれば、お釣りがでます。
その他、フラット35適合証明書の発行、瑕疵保険の検査、耐震診断を同時に行う場合は+7万円くらいです。
高額な不動産購入において、この検査費用が高いと思うか妥当だと思うか、個人的には将来のリスクを考えれば、決して高い金額だとは思いません。
仮に、インスペクションの結果、購入を見送ったとしても、しっかりと自分も検査に立ち会って、インスペクターに色々と教えてもらう事により、後々その時の経験は必ず活きてきます。
まとめ
長文となりましたので、整理しましょう。
安心・安全な中古住宅取引には既存住宅売買瑕疵保険が欠かせません。
瑕疵保険に加入するには検査基準(インスペクションとほぼ同じ検査項目)に合格する必要があります。
つまり、結果的に中古住宅の購入時にはインスペクション(建物状況調査)が欠かせないという判断になるわけです。
冒頭でお伝えした「あの程度の調査では意味がない」と言っている宅建業者は、制度の本質がわかっていないのです。
確かに「建物状況調査」だけでは意味がありません。
ですが、中古住宅の購入には欠かせない仕組みなのです。
インスペクションや既存住宅売買瑕疵保険の質問を行って、納得できる回答が出来ない事業者は中古住宅の取引に慣れていない、あるいはリスクをお座なりにしている可能性があります。
こういった制度の知識は、不動産事業者の選定基準にもなりますので、中古住宅(特に戸建て)を検討されている方は、まず担当者にインスペクション(建物状況調査)や既存住宅売買瑕疵保険について質問してみることをお勧め致します。
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